このページでは、原因を説明しにくい身体症状、更年期に伴うつらさ、自律神経に関係する指標について、鍼灸研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを分けてお伝えします。
最初にお伝えしたいこと
鍼灸は、医師による判断や治療に代わるものではありません。研究で報告された結果も、すべての方に同じ変化が起こることを意味しません。
当院では、論文があることだけを理由に効果を断定せず、研究の対象人数、比較方法、結果のばらつきまで確認したうえで、鍼灸が補完的な選択肢になり得るかを考えます。
研究で確認されていること
原因を説明しにくい身体症状と心身の良好さ
英国のプライマリケアで、医学的に説明しにくい身体症状が続き、医療機関の利用回数の多い成人80人を対象に、通常ケアへ鍼治療を追加した研究があります。26週時点で、鍼治療を追加したグループは心身の良好さを示す指標で改善が報告されました。
研究の限界:小規模で、偽鍼との比較ではありません。個別症状の評価は欠測値の扱いによって統計学的な差が明確でなくなり、医療機関の利用回数や服薬数には群間差が確認されませんでした。
鍼刺激と自律神経に関係する心拍変動指標
鍼治療と偽鍼を比較した9件の研究をまとめた解析では、副交感神経活動に関係する心拍変動の一部指標で変化が示唆されました。鍼刺激が自律神経に関係する生理指標へ影響する可能性を検討した研究です。
研究の限界:元となる研究の質や測定条件にばらつきがあります。この結果だけから「自律神経が必ず整う」「症状が改善する」とは判断できません。
更年期に伴う症状と生活の質
更年期症状を対象にした研究では、鍼治療を受けない場合との比較で、血管運動症状や生活の質の改善が報告されています。一方、偽鍼との比較では効果が小さくなる、または差が明確でない研究があります。
研究の限界:特にホットフラッシュについては結果が一貫しておらず、北米閉経学会の2023年声明では、積極的に推奨できるほど十分で一貫した根拠はないと評価されています。
当院が、この研究からお伝えできること
- 原因を説明しにくい身体症状に対して、鍼灸を通常の医療と併用する研究が行われています。
- 鍼刺激と、自律神経に関係する生理指標との関係が研究されています。
- 更年期に伴うつらさや生活の質についても研究されていますが、症状や比較条件によって結果は異なります。
当院が言わないこと
- 鍼灸で必ず自律神経が整う
- 薬や医療機関は必要ない
- 原因不明の症状の原因を鍼灸だけで断定できる
- 論文の結果が当院のすべての施術結果を保証する
医療機関との役割を分けます
医療機関へまだ相談していない症状、急に始まった強い症状、悪化している症状がある場合は、医療機関での確認を優先していただきます。すでに医療機関を利用中・服薬中の方は、その内容を尊重しながらお話を伺います。
参考文献・確認資料
Paterson C, et al. Acupuncture for frequent attenders with medically unexplained symptoms: a randomised controlled trial. Br J Gen Pract. 2011. 原著
Hamvas S, et al. Acupuncture increases parasympathetic tone, modulating HRV: systematic review and meta-analysis. Complement Ther Med. 2023. PubMed
Befus D, et al. Management of Menopause Symptoms with Acupuncture: An Umbrella Systematic Review and Meta-Analysis. J Altern Complement Med. 2018. PubMed
The North American Menopause Society. 2023 Nonhormone Therapy Position Statement. Menopause. 2023. PubMed
厚生労働省「あはき・柔整広告ガイドライン」(令和7年2月18日) 資料を見る
最終確認日:2026年7月24日